相続と生前贈与のどちらを選ぶか迷っている方へ、110万円の考え方や制度の違い、注意点、専門家へ相談する際の判断ポイントを分かりやすく整理します。
目次
相続と生前贈与の違いと選び方

生前贈与は相続前に財産を渡す方法
生前贈与とは、相続が発生する前に、自分の財産を無償で相手へ渡すことです。死亡後に財産が引き継がれる相続とは、財産を移す時期が大きく異なります。
生前贈与では、財産を持っている本人が生きているうちに「誰に何を渡すか」を考えられることが特徴です。そのため、将来の財産承継について本人の意思を反映させながら進めたい場合には、検討する価値があります。
一方、生前贈与では贈与税について考える必要があります。また、過去に行った贈与が、将来の相続税の計算に関係する場合もあります。
そのため、「相続税が気になるから、とりあえず毎年贈与する」という進め方ではなく、相続と贈与の両方を見ながら考えることが重要です。最初に現在の財産と家族関係を整理すると、どの方法を検討すべきか見えやすくなります。
生前贈与が向いている人と慎重に考えたい人
生前贈与は、時間をかけて財産承継を進めたい場合や、渡したい相手や財産がある程度決まっている場合に検討しやすい方法です。一方で、誰に何を渡すか決まっていない状態では、急いで贈与する必要があるとは限りません。
たとえば、次のような状況では生前贈与を検討する余地があります。
- 元気なうちから財産承継を考えたい
- 誰にどの財産を渡したいか希望がある
- 現金だけでなく不動産などの承継も検討している
- 将来の相続税と贈与税を比較したい
- 子だけでなく孫などへの贈与も考えている
反対に、贈与後の生活資金に不安がある場合や、家族間の財産配分が決まっていない場合には慎重な検討が必要です。
税金だけを見て財産を移してしまうと、本人の生活や将来の遺産分割に影響する可能性があります。「いくら贈与できるか」だけでなく、「贈与した後も安心して暮らせるか」まで含めて考えることが大切です。
相続と生前贈与を選ぶときの判断基準
相続と生前贈与のどちらを選ぶかは、一つの条件だけでは決められません。財産額、年齢、家族構成、財産の種類、贈与したい相手などを組み合わせて考える必要があります。
特に確認したいのは、現在どのくらいの財産があり、将来誰が相続する可能性があるかという点です。そのうえで、生前贈与した場合の贈与税と、贈与せず相続した場合の相続税を比較していきます。
また、現金と不動産では確認事項が異なります。子への贈与と孫への贈与でも、将来の相続との関係は同じとは限りません。
つまり、「相続と生前贈与のどちらが得か」という問いに、すべての家庭に共通する答えはありません。税金だけで結論を出すのではなく、家族への財産の渡し方まで含めて判断することが大切です。
生前贈与の税金と110万円の注意点

暦年課税の110万円と生前贈与加算
生前贈与について調べると「年110万円」という金額を目にすることがあります。暦年課税では、贈与を受けた人について年間110万円の基礎控除があります。
ただし、「毎年110万円までなら、将来の相続とは無関係」と考えるのは注意が必要です。
相続などによって財産を取得した人が、一定期間内に暦年課税による贈与を受けていた場合、その贈与財産が相続税の課税価格へ加算されることがあります。
材料で確認できる2026年時点の制度では、2026年12月31日以前に相続が開始した場合の加算対象期間は3年以内です。その後は制度改正によって対象期間が段階的に延びます。
そのため、生前贈与を長期的な相続対策として検討する場合は、現在の年齢や家族状況だけでなく、将来の相続との関係も確認しておく必要があります。
相続時精算課税の110万円との違い
相続時精算課税についても、2024年1月1日以後の贈与には年110万円の基礎控除が設けられています。ただし、暦年課税の110万円と相続時精算課税の110万円は、同じ金額だからといって同じ制度ではありません。
ここは、生前贈与を検討するときに混同しやすい部分です。
暦年課税と相続時精算課税では、贈与したときの扱いだけでなく、将来相続が発生したときの考え方にも違いがあります。そのため、「110万円まで」という部分だけを切り取って制度を選ぶことは避けたいところです。
どちらを選ぶべきかは、今後どのくらいの期間にわたって贈与する予定なのか、どの財産を誰に渡すのかなどによって変わります。
制度名だけで選ぶのが難しい場合には、両方を使った場合の違いを確認したうえで判断すると安心です。
税金だけで決めないための注意点
生前贈与を検討するときは、相続税や贈与税だけでなく、家族全体の財産承継を考えることが重要です。
たとえば、税負担を減らすことだけを優先して特定の人へ財産を多く渡すと、将来の遺産分割との関係が問題になることがあります。また、実際には財産を渡していないのに名義だけを変えたような状態では、意図した贈与として扱われるか確認が必要です。
不動産を贈与する場合には、現金の贈与とは異なる税金や手続きも関係します。
生前贈与は「税金を減らす方法」としてだけ捉えるのではなく、家族へ財産をどのように引き継ぐかを考える手段の一つとして検討することが大切です。
財産や家族の状況で変わる生前贈与の考え方

現金を生前贈与するときの確認ポイント
現金の生前贈与では、誰から誰へ、いつ、いくら渡したのかを整理しておくことが大切です。単に家族名義の口座へお金を移せば、それだけで安心というわけではありません。
贈与は、財産を渡す側だけで完結するものではなく、受け取る側との関係も重要になります。そのため、将来「これは贈与だったのか、それとも親のお金を子の名義で管理していただけなのか」といった疑問が生じないよう、実態を整理しておく必要があります。
特に毎年継続して贈与する場合には、金額だけを見るのではなく、どのような形で財産を渡しているかも確認したいところです。
生前贈与を始める前に、現在の預貯金、今後必要になる生活資金、誰へ渡したいのかを整理しておくと、贈与額を決める際の判断材料になります。
不動産を生前贈与するときの注意点
不動産は、現金と同じ感覚で生前贈与を決めないことが大切です。贈与税だけではなく、不動産を移転することに伴う税金や手続きまで確認する必要があります。
材料では、不動産の生前贈与を考える際には、登録免許税や不動産取得税なども含めて相続との違いを比較することが重要な論点として挙げられています。
たとえば、「将来この家は子に渡したい」という希望が明確でも、生前に贈与する方法と、相続によって引き継ぐ方法では負担や手続きが異なります。
そのため、不動産については「早く名義を変えたほうがよい」と決めつけず、生前贈与した場合と相続まで保有した場合を比べてから判断したいところです。不動産の評価や税負担まで関係する場合には、専門家への確認が必要になります。
子・孫など贈与する相手による違い
生前贈与では、「いくら渡すか」と同じくらい「誰に渡すか」が重要です。子に贈与する場合と、孫などへ贈与する場合では、将来の相続との関係が同じとは限りません。
また、家族の一人だけに多くの財産を贈与すると、税金とは別に将来の遺産分割へ影響する可能性もあります。生前贈与を進める際には、贈与を受ける人だけでなく、ほかの家族とのバランスにも目を向ける必要があります。
「孫に贈与すれば有利」「子に渡すよりよい」といった一つの情報だけで判断するのではなく、家族構成や将来の相続人、財産の配分まで整理することが大切です。
誰に何を渡したいのかが決まったら、その贈与が将来の相続にどのような影響を与える可能性があるかまで確認しましょう。
生前贈与を自分で考える範囲と専門家への相談目安

自分で整理できる財産・家族・贈与目的
専門家へ相談する前でも、現在の状況を整理することはできます。最初から細かな税額を計算するより、まず「何を持っていて、誰に渡したいのか」を把握することが重要です。
相談前には、次の情報を分かる範囲で整理しておくと話が進みやすくなります。
- 預貯金、不動産など現在把握している財産
- 財産を持っている方の年齢
- 配偶者、子、孫などの家族構成
- これまで行った生前贈与
- 誰にどの財産を渡したいか
- 生前贈与を考えている理由
この段階では、すべての財産を正確に評価できていなくても、まず全体像を把握することが大切です。
一方、相続税や贈与税の具体的な計算、暦年課税と相続時精算課税の選択、不動産を含む財産の評価などは、個別条件によって結論が変わります。自分で整理する部分と、専門家に確認する部分を分けて進めると判断しやすくなります。
税額比較や制度選択を相談したいケース
「生前贈与をしたほうが得なのか」を具体的に知りたい場合は、専門家へ相談する段階です。制度の説明を読むだけでは、自分の財産や家族構成に当てはめた結論までは出しにくいためです。
特に、複数の不動産がある、財産額が大きい、すでに何年も贈与を続けている、暦年課税と相続時精算課税のどちらを使うか迷っている、といった場合には個別の確認が重要になります。
また、税金だけでなく、家族間の財産配分について不安がある場合も慎重な判断が必要です。
専門家へ相談するときは、「生前贈与をした場合」だけを計算するのではなく、「何もしなかった場合」と比較してもらうことがポイントです。両方を比べることで、生前贈与をする目的がより明確になります。
相続と生前贈与を比較して考える相談の進め方

生前贈与する場合としない場合を比べる考え方
私たちは、生前贈与について考える際、最初から「贈与したほうがよい」と決めるのではなく、相続のまま財産を引き継ぐ場合も含めて比較することが大切だと考えています。
なぜなら、生前贈与が有効かどうかは、財産額や年齢、家族構成、財産の種類などによって変わるからです。
比較する際には、生前贈与した場合の贈与税だけでなく、将来の相続税との関係も確認します。不動産が含まれる場合には、財産を移すことに伴う税金や手続きも考える必要があります。
その結果、生前贈与を急がず、相続まで財産を保有する選択が適している場合もあります。
相談することは、生前贈与を実行すると決めることではありません。まず現在の状況を整理し、贈与する場合としない場合の違いを確認するところから始めると、納得できる財産承継を考えやすくなります。
相談前に整理しておきたい情報
相続と生前贈与を具体的に比較するには、現在の財産と家族の状況が分かる情報が必要です。すべてを完璧にそろえてから相談する必要はありませんが、分かる範囲で整理しておくと確認がスムーズです。
特に重要なのは、預貯金や不動産などのおおまかな財産内容と家族構成です。過去に生前贈与を行っている場合には、その時期や金額も分かる範囲で整理しておきましょう。
また、「相続税を減らしたい」「特定の財産を子へ渡したい」「孫にも財産を残したい」など、何を目的としているのかも重要な情報になります。
具体的な税額や制度選択について不安がある方は、まず状況を整理するところからご相談いただけます。生前贈与を行うことだけを目的にせず、将来の相続まで含めて比較することが大切です。
相続と生前贈与に関するよくある質問

年110万円までなら必ず相続税にも影響しませんか?
必ず影響しないとは限りません。暦年課税では年間110万円の基礎控除がありますが、相続などによって財産を取得した人が一定期間内に受けた贈与については、相続税の課税価格への加算対象になる場合があります。
そのため、「110万円以下だから相続とは関係ない」と金額だけで判断しないことが大切です。
また、相続時精算課税にも2024年1月1日以後の贈与について年110万円の基礎控除がありますが、暦年課税とは制度が異なります。同じ110万円でも分けて理解する必要があります。
亡くなる直前にした生前贈与の注意点
相続開始前の一定期間に行われた暦年課税による贈与は、条件によって相続税の課税価格へ加算される場合があります。そのため、相続直前に贈与すれば必ず相続税対策になるとは限りません。
材料で確認できる制度では、2026年12月31日以前に相続が開始した場合は3年以内が加算対象期間となり、その後は制度改正によって対象期間が段階的に延びます。
高齢になってから生前贈与を考え始めた場合も、年齢だけで「もう遅い」と判断するのではなく、現在の財産、家族構成、贈与する相手などを確認したうえで、今できる方法を検討することが大切です。
不動産は相続と生前贈与のどちらを選ぶべき?
一律にどちらがよいとは決められません。不動産を生前贈与する場合には、贈与税だけでなく、登録免許税や不動産取得税なども含めて検討する必要があります。
一方、相続によって取得する場合にも、相続税を含めた確認が必要です。
そのため、不動産の価値やほかの財産、誰が取得する予定なのかなどを整理し、生前贈与した場合と相続した場合を比較して判断することが重要です。
生前贈与について相談する前の準備
相談時には、財産と家族の全体像が分かる情報があると確認がスムーズです。最初から完全な資料をそろえることより、分かる範囲を整理することから始めてください。
たとえば、次のような情報が判断材料になります。
- 預貯金や不動産などの財産内容
- 配偶者、子、孫などの家族構成
- 過去に行った贈与の時期や金額
- 贈与したい相手や財産
- 生前贈与を考え始めた理由
具体的に必要となる資料や相談時の費用、対応範囲については事前確認が必要です。
生前贈与をしない選択も相談できますか?
生前贈与を検討する際には、「贈与すること」を前提にせず、相続まで財産を保有する場合との比較が重要です。
財産額や家族構成などによっては、生前贈与を急がないほうがよい場合もあります。そのため、相談するときは「いくら贈与すればよいか」だけでなく、「そもそも生前贈与が必要なのか」というところから確認するとよいでしょう。
私たちは、財産承継を考える際には、税金だけでなく、本人の今後の生活や家族への財産の渡し方まで含めて整理することが大切だと考えています。判断に迷っている段階でも、まずは状況を整理するところからご相談いただけます。
相続と生前贈与を考える方への確認ポイント
- 生前贈与は、相続が発生する前に財産を渡す方法です
- 生前贈与をすれば必ず税負担を抑えられるわけではありません
- 相続と生前贈与は、財産額や家族構成などを踏まえて比較することが大切です
- 暦年課税では年間110万円の基礎控除があります
- 110万円以下の贈与でも、将来の相続税との関係を確認する必要があります
- 相続時精算課税にも2024年以後の贈与について年110万円の基礎控除があります
- 暦年課税と相続時精算課税の110万円は同じ制度ではありません
- 現金を贈与するときは、誰から誰へ財産を渡したのかを整理することが大切です
- 不動産の生前贈与は、贈与税以外の税金や手続きも含めて比較する必要があります
- 子や孫など、誰に贈与するかによって将来の相続との関係が変わる場合があります
- 生前贈与を考える前に、現在の財産と家族構成を整理すると判断しやすくなります
- 税額を比較するときは、生前贈与する場合としない場合の両方を確認することが大切です
- 判断に迷う場合は、生前贈与をするか決める前の段階から専門家へ相談できます